正直に言えば、最初は途方に暮れてました。
日東のオリジナル台車販売のために新設された販売促進課。
立ち上げスタッフで入社したばかりの自分。
初めての営業。初対面のチームの面々。
「なんか面白そう」とワクワクしていたのも束の間でした。
さて、やりましょう。手始めに何をしますか?
この台車を売る?
そうですよね、台車ですよね。弊社オリジナルの。
よし、台車を売るんだ。はて、台車を売る…。
あれ?何をすればいいんだ?
ふと気付き、みんなで社内を見渡すも、ノウハウを持っている人間は一人もいなかった。
それもそのはず、日東にとっても初めてのチャレンジなのだから。
そうか、そういうことかとヘンに納得しながらも、
全員の頭の中で「どうしよう!」と緊急アラームが鳴り響いていたのです。
台車といえば通常、ホームセンターや
大型ショッピングセンターの店頭で売られています。
なんとか、日東の台車も置いてもらいたい。
そこで上司と相談して始めたのが、
店舗に商品を降ろしている商社さんへのアタックです。
しかし悲しいかな。見ず知らずのメーカーがいきなり、
「うちの台車を扱ってくれませんか」と飛び込んでも、上手くいきません。
ところが、接触を続けるうちに、
「そう言えば◯◯県の△■というホームセンターが、
台車を扱いたいと言ってたな…」
なんて情報が、チラホラと出てくるではありませんか。
さっそく台車を営業車に積み込み、自分は岩手へ、上司は高知へ、広島へ。
「お店に置いてくれませんか」と全国行脚の始まりです。
あるときは一緒に店頭に立ち、販売のお手伝い。
またあるときは、店員さんへ台車の特徴をレクチャーする日々が続きます。
地道な努力のおかげで少しずつ売上が立つようになり、
ようやく商社さんでの取り扱いも始まった頃でした。
ついに大ブレイクの瞬間が訪れたのです。
きっかけは社長発案の新製品でした。
女性が扱える、軽量・コンパクトで持ち運びベンリな台車。
その名も『おてがるキャリー』です。
正直に言います。最初は売れるかどうか半信半疑でした。
チームのみんなも同じだったと思います。ところがです!
ふとした幸運で決まった、テレビショッピングでの販売。
いざ勝負!フタを開けてみると…
なんと1時間で3,000台も売り上げてしまったのです。
もう、嬉しいなんてもんじゃありません。いい歳して泣きそうです。
関係者全員で飛び上がって喜んだのは、言うまでもありません。
この出来事がきっかけとなり、日東の台車は大ブレイク。
商社さんからも「うちで取り扱いたい」と問い合わせが続きました。
スタート時からは考えられない反応です。
最終的に、『おてがるキャリー』は年間7万台出荷の大ヒット。
日東の台車シリーズ全体でも、年間13万台を売り上げることができたのです。
今のところ、日東の台車販売事業は軌道に乗ったと言えるでしょう。
でも、気は抜けません。
むしろプレッシャーが日増しに大きくなります。
『おてがるキャリー』に続くヒット商品が必要です。
商社さんとタッグを組んでの、
OEM製品の企画・開発・生産にも取り組んでいます。
成功体験を重ねるたび仕事のステージがあがっていき、
みんなで対応策に頭をひねる毎日です。
現在の一番の課題は、中国の販路開拓です。
手始めに狙うのは、現地進出している日系企業への売り込み。
それだけでなく、ゆくゆくは中国のショッピングセンターで
取り扱ってもらえるようにしたいのです。
でも、どうやって?
これまた、ノウハウを持っている人は
社内のどこにも見当たらないのですが。
大坪昌史(おおつぼまさし)
中途入社。元トラックドライバーから営業という仕事にチャレンジするために転職を決める。日東でオリジナル台車の営業を担当するうちに商品知識を深め、プライベートでも一般で売られている台車の研究・考察に余念がない。
日東に販売促進課が新規開設される際に、営業志望で入社。日東という会社のことは知らなかったが、これから立ち上げる新事業に関われること、オリジナル製品を販売するために、まったく新しい販路を切り拓き、新しい人たちと出会い、コミュニケーションを深めていく仕事であることに惹かれて日東の門を叩いた。ちなみに、営業経験もなく自身にとっても新たなチャレンジだった。